世一 国際特許事務所
 
        ◎ 特許法対照 2007
            日韓特許法の対照
            韓日特許法の対照
            両国特許法の主要差違点
            の解説
            付録
        ◎ 特許法対照 2003
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          特許法対照
         両国特許法の主要差違点の解説
  1. 総則
  (1) 発明及び実施の概念
  日本特許法第二条第三項及び第四項、韓国特許法第二条第三号イ目
 
日本特許法上では、物の発明の概念中にプログラム等を含んでおり、これに対する実施の概念を明確に規定しています。ところが、韓国特許法上ではこのような規定がなく、韓国はコンピュータープログラム自体に対しては特許法で保護せず、コンピュータープログラム保護法という著作権法上の特別法により保護しているだけです。
     
  (2) 代理権の証明
  韓国特許法第七条
  韓国特許法上では、代理人により特許権に関する手続をするためには、必ずその代理権があることを証明する委任状を提出しなければなりません。ところが、日本特許法上ではこのよう規定がありません。
 
  2. 出願及び審査
  (1) 公知あるいは公然実施による新規性喪失
  日本特許法第二十九条第一項第一号及び第二号、韓国特許法第二十九条第一項第一号
  日本特許法上では、公知あるいは公然実施による新規性喪失の可否を判断するにあって、その判断の地域的範囲を国内又は外国にわたり全て認めていますが、韓国特許法上では国内にのみ限り認めています。
     
  (2) 電気通信回線による新規性喪失
  日本特許法第二十九条第一項第三号、韓国特許法第二十九条第一項第二号。
  日本特許法上では、新規性を喪失した発明とみなす場合において、電気通信回線による公知はその適用対象の制限がない一方、韓国特許法上では大統領令が定める電気通信回線による公知のみを新規性喪失の事由とみなしています。即ち、日本特許法が新規性を喪失した発明とみなす対象の範囲の方がより広いと見ることができます。
     
  (3) 電気通信回線による新規性擬制
  日本特許法第三十条第一項、韓国特許法第三十条第一項
  日本特許法上では、新規性擬制事由のうち電気通信回線による公知はその対象の制限がありませんが、韓国特許法上では大統領令が定める電気通信回線による公知のみを新規性擬制事由とみなしています。即ち、日本特許法が新規性擬制を認める範囲の方がより広いと見ることができます。
 
  (4) 植物発明
  韓国特許法第三十一条
  韓国特許法上では、無性的に反復生殖できる変種植物ではない植物は、特許の対象としていません。ところが、日本特許法上ではこのようは規定がありません。
     
  (5) 無権利者の特許出願に対する正当な権利者の保護
  韓国特許法第三十四条、第三十五条
  韓国特許法上では、発明者ではない者であって、特許を受けることができる権利の承継人ではない者(無権利者)の特許出願が拒絶されたり、登録後、取消し又は無効となったとき、所定の期間内に同発明に対する正当な権利者が出願するときは、その正当な権利者の特許出願は拒絶、取消し又は無効となった特許の出願時に特許出願したものとみなすという、正当な権利者の保護規定があります。ところが、日本特許法上ではこのような規定がありません。
     
  (6) 外国語書面を添付した特許出願
  日本特許法第三十六条の二、第百八十四条の四
  日本特許法上では、特許を受けようとする者が出願書に添付しなければならない明細書、必要な図面及び要約書の代わりに、外国語書面及び外国語要約書面を添付することができ、外国語書面出願の出願人はその特許出願日から2月以内に、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を特許庁長に提出しなければならなく、期間内に翻訳文の提出がないときはその特許出願は取消されたものとみなす規定があります。尚、外国語でされた国際特許出願の出願人が、国内書面提出期間の満了前二月から満了の日までの間に第百八十四条の五第一項に規定する書面を提出した場合は、当該書面の提出の日から二月以内に日本語翻訳文を提出することができる、いわゆる翻訳文提出の特例期間に関する規定があります。ところが、韓国特許法上ではこのような外国語書面の出願制度がありません。従いまして、韓国に対して条約優先権主張出願をしようとする者は、必ず韓国語からなる明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならなく、韓国を指定国として国際特許出願をしようとする者は、必ず韓国語からなる翻訳文を優先日から三十月以内に提出しなければなりません。
     
  (7) 先の出願の地位
  日本特許法第三十九条第五項、韓国特許法第三十六条第四項
  日本特許法上では、特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄、取下げ、若しくは却下されたとき、又は特許出願に対し拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、原則的に全ての場合においてその特許出願又は実用新案登録出願は、先の出願主義の規定を適用するにあって、初めからなかったものとみなしています。ところが、韓国特許法上では特許出願又は実用新案登録出願が放棄されたり、特許出願に対して拒絶しなければならない旨の決定又は審決が確定したときは、依然と先の出願の地位が存在しているものと規定しています。従って、韓国特許法上では特許出願が放棄されたり、拒絶決定が確定した後、第三者がこれと同一の発明を出願する場合にも、その第三者の出願は先の出願主義の規定により拒絶され得ます。
     
  (8) パリ条約による優先権主張の手続
  日本特許法第四十三条、韓国特許法第五十四条及び特許法施行規則第二十五条
  韓国特許法上では、パリ条約による優先権を主張した者がその証明書類を提出するときは、当該優先権証明書類と翻訳文1通、代理人により手続をする場合は、その代理権を証明する書類1通を添付しなければなりません。ところが、日本特許法上では優先権証明書類の翻訳文と代理権を証明する書類を添付しなくても構いません。一方、日本国での出願に基づき、韓国についてパリ条約による優先権を主張した者であれば、優先権証明書類の提出を省略できます。従って、日本国での出願に基づき、韓国についてパリ条約による優先権を主張した者は、優先日から1年4月以内に優先権証明書類の翻訳文1通と、代理人により手続をする場合はその代理権を証明する書類1通を添付して提出することにより、優先権証明手続をすることができます。
     
  (9) 出願変更
  日本特許法第四十六条、韓国特許法第五十三条
  日本特許法上では、実用新案登録出願及び意匠登録出願が所定の期間内にこれを特許出願に変更できる出願変更制度があります。韓国特許法上でも旧法にはこのような規定がありましたが、1999年1月1日付で施行された改正法により出願変更制度は廃止され、二重出願制度が新設されました。韓国特許法上の二重出願制度とは、実用新案登録出願をした者が、その実用新案登録出願をした日から実用新案権の設定登録後1年になる日まで、その実用新案登録出願の出願書に最初に添付された明細書の実用新案登録請求範囲に記載された事項の範囲内で特許出願(二重出願)をした場合、その特許出願は実用新案登録出願をしたときに出願されたものとみなすことをいいます。
     
  (10) 優先審査
  日本特許法第四十八条の六、韓国特許法第六十一条
  日本特許法と韓国特許法は、両者が共通的に優先審査に関する規定があります。ところが、優先審査の対象となり得る場合の差異があります。即ち、日本特許法は出願公開後に特許出願人でない者が業として特許出願に係る発明を実施していると認める場合のみを対象として規定していますが、韓国特許法はこれ以外にも@防衛産業分野の特許出願、A公害防止に有用な特許出願、B輸出促進に直接関連された特許出願、C国家又は地方団体の職務に関する特許出願、Dベンチャー企業育成に関する特別措置法第二十五条の規定によるベンチャー企業の確認をとった企業の特許出願、E国家の新技術開発支援事業又は品質認証事業の結果物に関する特許出願、F条約による優先権主張の基礎とされる特許出願(当該特許出願を基礎とする優先権主張により、外国特許庁で特許に関する手続が進行中であるものに限る)、G特許出願人が特許出願された発明を実施しているか、実施準備中である特許出願、H電子取引と直接関連された特許出願を優先審査の対象とみなしています。
     
  3. 特許権
  (1) 特許発明の技術的範囲
  日本特許法第七十条、韓国特許法第九十七条
  特許権の効力が及ぶ内容的範囲を決定するにあって、その判断対象を何にするかに関しては、周辺限定主義と中心限定主義の対立があります。周辺限定主義とは、特許発明の保護範囲は特許請求の範囲に記載された事項の文献的意味のみで解釈すべきであり、それ以外の記載事項、即ち発明の詳細な説明による拡張解釈は認められないという解釈方法をいいます。そして、中心限定主義とは、特許発明の保護範囲を解釈するにあって、特許請求の範囲の記載事項に拘らず、そこに表現された実質的な発明思想を保護しようとするものであって、特許請求の範囲と明細書全体を一体にして発明思想の核心を把握した後、これに相応する範囲まで保護範囲を認める解釈方法をいいます。
日本特許法上では、特許発明の技術的範囲を判断するにあって、特許請求の範囲以外にも発明の詳細な説明及び図面、そして要約書を考慮させる明文の規定がありますが、韓国特許法上ではその見解の対立は別論にして、特許発明の保護範囲を判断するにあって、特許請求の範囲以外にも発明の詳細な説明及び図面を考慮すべきという明文の規定はなく、さらに要約書を特許発明の保護範囲の解釈基準とすることを禁止しています。
     
  (2) 不公正取引行為として判定された事項を是正するための裁定
  韓国特許法第百七条
  韓国特許法上では、司法的手続又は行政的手続により不公正取引行為として判定された事項を是正するために、特許発明を実施する必要がある場合を裁定事由としています。ところが、日本特許法上ではこのような規定がありません。
     
  (3) 自己の特許発明の実施をするための通常実施権の設定の裁定
  日本特許法第九十二条、韓国特許法第百三十八条
  日本特許法上では特許権者が自己の特許発明を実施するにあって、抵触関係にある先行権利者の同意を得られない場合は、裁定を請求できるようにしていますが、韓国特許法上では、このような場合に特許権者が通常実施権許与審判を請求できるように規定しています。
 
  (4) 不実施による特許権の取消し
  韓国特許法第百十六条
  韓国特許法上では、特許発明が天災・地変その他不可抗力又は大統領令が定める正当な理由なく、継続して三年以上国内で実施されていない事由による裁定があった日から、継続して二年以上その特許発明が国内で実施されていない場合は、特許庁長が利害関係人の申請により、又は職権でその特許権を取消すことができるようにする規定があります。ところが、日本特許法上ではこのような規定がありません。
     
  (5) 生産方法の推定
  日本特許法第百四条、韓国特許法第百二十九条
  日本特許法上では物を生産する方法の発明に対する生産方法の推定に対する例外事由として、その物が特許出願前に日本国内において公然と知られた場合を規定しています。ところが、韓国特許法上ではこれ以外にも特許出願前に国内又は国外で頒布された刊行物に掲載されたり、大統領令が定める電気通信回線を通じて公衆が利用可能となった物件もまた生産方法の推定に対する例外事由として規定されています。
     
  (6) 効力制限期間中の善意の実施による法定実施権
  韓国特許法第八十一条の三第四項及び第五項
  韓国特許法上では、特許料の追加納付期間が経過した日から納付したり、補填した日までの期間(効力制限期間)中に、他の人が特許発明を実施した行為についてはその効力が及ばない一方、上記の効力制限期間中に国内で善意で特許出願された発明又は特許権についてその発明の実施事業をしたり、その事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明又は事業の目的の範囲内で、その特許出願された発明に対する特許権について有償の通常実施権を有します。ところが、日本特許法上では特許権の効力の制限に関する規定はあるものの、法定実施権に関する規定は存在していません。
     
  (7) 特許異議申立制度
  韓国特許法第六十九条ないし第七十八条の二
  韓国特許法上では、何人も特許権の設定登録があった日から登録公告日後三月になる日まで、その特許が異議申立事由に該当するということを理由に、特許庁長に特許異議申立をすることができ、当該特許に異議申立自由があることが認められる場合は、その登録を取消すことができるようにする異議申立制度が規定されています。日本特許法上でも旧法では異議申立制度を規定していましたが、2004年1月1日に施行される改正法では異議申立制度が廃止されています。
 
  4. 審判及び訴訟
  (1) 無効審判の請求人適格
  日本特許法第百二十三条、韓国特許法第百三十三条
  韓国特許法上で無効審判を請求できる者は、利害関係人又は審査官に限ります。ところが、日本特許法上では特定の無効事由を除いては何人も無効審判を請求できるように規定されています。
     
  (2) 技術的範囲の判定
  日本特許法第七十一条、韓国特許法第百三十五条
  日本特許法上では、特許発明の技術的範囲について特許庁に対して判定を要求できる判定制度が規定されていますが、韓国特許法上ではこのような判定制度の代わりに特許審判院に対して審判を請求することにより特許発明の権利範囲を確認する権利範囲の確認審判制度が規定されています。
権利範囲の確認審判とは、特許発明の保護範囲、即ち特許権の効力が及ぶ範囲を確認するために請求する審判をいうものであって、これは特許権を囲む当事者同士の紛争において技術専門家で構成された審判官合議体により、予め特許発明の保護範囲、即ち特許権の効力の及ぶ範囲の確認をとっておくことにより、複雑な訴訟手続に先立って権利間の利用抵触の問題、侵害問題を円満に解決する客観的な判断を求めることにその趣旨があります。
権利範囲の確認審判には、請求対象物(いわゆる(イ)号発明)の技術的範囲が特許発明の技術的範囲に属するという審決を求める積極的権利範囲の確認審判と、請求対象物(いわゆる(イ)号発明)の技術的範囲が特許発明の技術的範囲に属さないという審決を求める消極的権利範囲の確認審判の二つの種類があります。
     
  (3) 訂正の無効審判
  日本特許法第百二十三条、韓国特許法第百三十七条
  日本特許法上では、特許発明に関する不適法な訂正が錯誤により登録された場合は、これを特許無効審判の対象としていますが、韓国特許法上ではこれを訂正の無効審判という別個の手続の対象としています。
     
  5. 国際出願
  (1) 拡大された先の出願の地位の特例
  日本特許法第百八十四条の十三、韓国特許法第二十九条第四項
  日本特許法条では、第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案登録出願が、国際特許出願又は実用新案法第四十八条の三第二項の国際実用新案登録出願である場合における第二十九条の二の規定の適用については、「願書に最初に添付した明細書若しくは図面」を、「第百八十四条の四第一項又は実用新案法第四十八条の四第一項 の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」としています。即ち、先の出願の範囲を国際出願時に提出した原文の範囲まで拡大しています。ところが、韓国特許法上では同一な規定を適用することにおいて認められる先の出願の範囲を、国際出願日に提出した国際出願の明細書・請求の範囲又は図面とその出願翻訳文に一緒に記載された発明又は考案に限定しています。
     
  (2) 異議申立及び無効審判の特例
  韓国特許法第二百十二条、第二百十三条
  韓国特許法上では、国際特許出願の特許が国際出願日に提出された国際出願の明細書・請求の範囲又は図面(図面中の説明部分に限る)と、その出願翻訳文に一緒に記載されている発明ではなかったり、国際出願日に提出された国際出願の図面(図面中の説明部分を除く)に記載されている発明ではない場合は、これを理由に特許異議申立又は特許無効審判を請求できる規定があります。ところが、日本特許法上ではこのような規定ありません。
     
  6. 雑則及び罰則
  (1) 侵害罪
  日本特許法第百九十六条、韓国特許法第二百二十五条
  韓国特許法上では侵害罪は告訴があってはじめて論ずることができる親告罪として規定されています。ところが、日本特許法上ではこのような規定がありません。

 

 

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